ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

銀の匙 中勘助

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なかなか開かなかった
古い茶箪笥の抽斗から
見つけた銀の匙。

大人になってからも
大切に持ち続けてきた
その銀の匙は、
伯母さんの
限りない愛情に包まれて
過ごした幼き日々を
回想させる。

著者自身の少年時代を
描いた自伝的小説。

時代は明治。
産まれた時から
身体の弱かった『私』は、
やはり身体が弱く
産後の肥立ちの悪かった
母親に代わって、
優しい伯母によって
大切に大切に育てられた。

いつも
伯母におぶさっていた
甘えん坊の『私』は、
近所の子供らに
虐められていた神田から、
身体の養生のために
小石川へ引っ越したことを
きっかけに、
少しずつ世界が広がってく。

『私』に
友達が出来るように、
一生懸命努めてくれる
伯母の愛がとても深い。

出会いと別れを繰り返し、
学校での勉強に
励むようになってくると、
メキメキと逞しくなっていく
『私』が眩しい。

逞しく成長した『私』が、
老いた伯母と
再会する場面では、
切ない伯母の気持ちが
痛いほど伝わってきて、
涙が溢れた。

優しい父母に、
守ってくれる伯母に姉。
厳しい兄。
愛に溢れた
家族に囲まれて過ごした
少年時代は、
幾つになっても
忘れがたい大切な
宝物だからこそ、
こんなにも鮮やかに
描けるのだろう。

青年になっても、
幼い頃と同じ様に
女の子にきちんと
別れを告げることが出来ない
『わたし』が、
微笑ましかった。



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赤毛のアン モンゴメリ

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内容に関しては、
言わずと知れた
世界的名作『赤毛のアン』。

私も児童向けの小説と
TVアニメには、
幼い頃から
何回も触れてきていたけれど、
原作を読むのは
実はこれが初めて。

初版は昭和27年。

カナダにある
夢のように美しい
プリンス・エドワード島の
グリン・ゲイブルスの
幼い少女の物語に
初めて触れた
当時の読者たちは、
どれほど
胸を躍らせたのだろうか。

内容を全て
知っていても、
村岡花子さんの美しい訳の世界に
うっとりと
心から引き込まれて
しまうのだから、
衝撃的な感動だったのでは
ないだろうか。

子供の頃の私は、
アンに想いを寄せながら
作品を楽しんでいたけれど、
大人になり
改めて本作品を読むと、
マリラの気持ちに
近い自分がいた。

マリラのアンへの
深い深い愛が、
ページを捲るたびに
ひしひしと伝わってくるのだ。

勿論マリラがアンを
愛していたことは
分かっていたけれど、
最初の時から
ずっと
これほどまでに
アンのことを大切に
愛おしく思っていたことに、
強く心が動かされた。

大人になり、
読み直して
本当に良かったなぁと思った。

ギルバートと仲直りをした
アンの青春の物語は、
まだまだ続く。
この先の
シリーズの内容は
全く知らないので、
大人の階段を登っていく
アンの物語を、
この先も
楽しんでいきたいと思う。


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蒲公英草紙 常野物語 恩田陸 

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常野シリーズ第2作目。
私は1作目を
読んでいなかったけれど、
不思議な能力を持つという
常野の人たちについては、
作中で
丁寧に説明がされるので、
全く問題なく
作品世界に入ることが出来た。

作品の舞台は、
戦前の東北の農村。

その地の
旧家である槙村家の、
末娘・聡子のお話相手として
屋敷に出入りすることになった
峰子が、
物語の語り手となっている。

平和で優しさに溢れた
ノスタルジックな
雰囲気に包まれた
前半とは相反し、
災害が襲いかかる
後半では、
空気感が一変する。

『呼ばれてここに来た』
という、
槙村家に滞在していた
常野の春田家の人々との交流。
そして、
槙村家の先祖にいたという
常野の嫁の話が
聡子がどう考えても
繋がってしまい、
今後の展開を考えると
胸が苦しくなった。

『村を守る』という
責任を担った槙村家の
家訓を全うした
聡子の最期には、
涙が止まらなかった。

また
幸せな幼少期を過ごし、
優しい人々に守られて
暮らしていた峰子の晩年が、
暗い時代の波に
飲み込まれたもので
あったことに、
切なさを禁じ得なかった。

言及されていない
登場人物たちも、
恐らく
戦争により、
辛い人生を
歩んだであろうことが
容易に想像がつく。

前半に描かれていた
幸福感との対比が、
あまりにも大きな
ラストシーンに、
人生の不条理を
感じずにはいられなかった。


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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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