
なかなか開かなかった
古い茶箪笥の抽斗から
見つけた銀の匙。
大人になってからも
大切に持ち続けてきた
その銀の匙は、
伯母さんの
限りない愛情に包まれて
過ごした幼き日々を
回想させる。
著者自身の少年時代を
描いた自伝的小説。
時代は明治。
産まれた時から
身体の弱かった『私』は、
やはり身体が弱く
産後の肥立ちの悪かった
母親に代わって、
優しい伯母によって
大切に大切に育てられた。
いつも
伯母におぶさっていた
甘えん坊の『私』は、
近所の子供らに
虐められていた神田から、
身体の養生のために
小石川へ引っ越したことを
きっかけに、
少しずつ世界が広がってく。
『私』に
友達が出来るように、
一生懸命努めてくれる
伯母の愛がとても深い。
出会いと別れを繰り返し、
学校での勉強に
励むようになってくると、
メキメキと逞しくなっていく
『私』が眩しい。
逞しく成長した『私』が、
老いた伯母と
再会する場面では、
切ない伯母の気持ちが
痛いほど伝わってきて、
涙が溢れた。
優しい父母に、
守ってくれる伯母に姉。
厳しい兄。
愛に溢れた
家族に囲まれて過ごした
少年時代は、
幾つになっても
忘れがたい大切な
宝物だからこそ、
こんなにも鮮やかに
描けるのだろう。
青年になっても、
幼い頃と同じ様に
女の子にきちんと
別れを告げることが出来ない
『わたし』が、
微笑ましかった。
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