ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

2020年03月

約束された移動 小川洋子

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小川洋子さんの短編集です。





正直なところ
私には作者の伝えたいことが
全く分からない作品もありましたが(恥)、
登場人物の上品な語り口に
とても好感を感じる、
ちょっぴり大人な美しい作品集でした。

ファンタジーではないのだけれど、
どことなく現実離れしたような
不思議な雰囲気を感じさせる独特な作風は
小川洋子さんならではなのでしょうか?

小川洋子さんの作品は他には
「博士の愛した数式」以外読んだことがないので、
よくわかりませんが・・・





私のなかで特によかったのは
表題作の「約束された移動」でした。




ハリウッドスターのBの泊まった部屋からは
決まって1冊の本がなくなっている。
それを自分への合図だと思う客室係の女性のお話。



Bが若手でとても美しい時代から
年老いて落ちぶれてしまいホテルに宿泊しなくなるまで、
30年以上もBの宿泊したスイートルームを掃除している彼女は、
Bの落とした髪の毛を収集し(驚)
名札の裏にしまっているのです。
かなり怖い・・・
Bが抜いていった本を購入して読み込み
Bの出演した映画はコマ単位で毎晩観る。
Bから自分へ託された秘密だと信じ込む彼女の
一方的な妄想がひたすら静かに語られているのだけれど、
私にはとても面白く感じました。

手の届かない存在の人との間に秘密を共有していると信じているのは
私から見ると彼女の妄想なのだけれど、
彼女にとっては真実なのでしょう。

だとしたら
私が真実だと信じていることが、
妄想だったなんてこともあるのかもしれない。


それって
ちょっと怖いかも・・・
























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私の家 青山七恵  

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恋人と別れて実家に帰ってきた娘・梓。
年の離れたシングルマザーに親身になる母・祥子。
孤独を愛しながらも3人の男性に生活を乱される大叔母・道世。
幼少期を思い出させる他人の家に足繁く通う父・滋彦。
何年も音信不通だった叔父・博和。
同じ家に暮らした彼らの記憶と小さな秘密の物語・・・





最近全然本が読めていません。
理由はひとつ。
コロナウイルスによる一斉休校により在宅する子どもたちに
ことごとく生活のリズムを崩されているからです。


もう中学生と高校生なので
昼食もかなりの量を食べるのです。
何だか、一日中ご飯の支度をしたり献立を考えたりで
ゆっくり読書に充てていた時間を活用できません。
学校から出されている大量の課題に手を付ける様子もなく、
ひたすらスマホをいじっている姿にイライラするし・・・
常に誰かがリビングにいるし・・・
ああ早く一人の時間が欲しいよ~



そんな微妙な気分のなか手に取ったのが
青山七恵さんの「私の家」です。










家に籠っている現状で家族の話はピッタリかな?
と思い読み始めたのですが・・・


どうにも久しぶりに私にはあまり合わない作品だったようで、
なかなか読み進められずに
読了するのになんと1週間もかかってしまいました



内容に問題があるわけでは決してありません。
淡々と家族の話が一人づつ続いていく比較的静かなお話です。


でも私には
共感できる登場人物も特に現れず、
母の祥子や照には違和感も感じてしまいました。
祥子の口癖の「てぃ!」って言葉には
嫌悪感すら感じてしまう始末。
大体
娘には厳しくて
赤の他人に何十万もあげようとするとか意味不明。




「家族にはそれぞれ色々あるよな~」
読了後はそんな感想のみでした。



唯一好きな登場人物は
道世さんかな。
自由なはずなのに、思うようにならない部分もあり、
でもそんな暮らしが一番心地が良い気がしました。




気持ちが塞ぎこみがちな時には、
ミステリーなどを読んだほうが気持ちが上がるかもしれませんね!




ちなみに以前録画していた
「日の名残り」を数日に分けて夜に観ていたのですが、
こちらの物語は
淡々としたなかに様々な気持ちが交差していて
とても素敵な作品でした。
映像もとても楽しませてくれました。











カズオイシグロの原作も読んでみたいな♪












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活版印刷三日月堂 小さな折り紙 ほしおさなえ

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活版印刷三日月堂シリーズ
番外編第2弾♪








とうとうシリーズ最終話です。
ついにこの日が訪れてしまったか・・・

大袈裟なようですが
一読者として
三日月堂と弓子さんの成長を見届けてきた私としては、
感慨深いものがあるのです。


番外編ということで、
今回も今まで登場してきた人たちの
身近な人が主人公になった6つの短編集になっています。
本編のその後のお話も含まれているので、
初めての方は
是非本編から読まれることをお勧めします♪



同じ三日月堂を巡ってのお話でも
視点が変わると
また見えているものや
感じていることが違ってくるから
とても面白いですよね。


いままで1作目から頻繁に登場していた
デザイナーの金子さんのお話も、
ようやく含まれていました。
「実はこんなに涙もろいひとだったのね」と、
思わずクスッとしてしまいましたよ。
これまでのイメージがすっかり変わってしまいました(笑)




そして今作品最大の目玉は
何といっても「佑」の存在でしょう。
なんと
弓子さんと悠生さんの息子が登場するのです。
これがまた
めちゃめちゃ良い子!
このお話は表題にもある「小さな折り紙」になるのですが、
弓子さんの幼いころの出来事も出てきて
胸が苦しくなる場面もありましたが
明るい未来が見える終わり方で、
とても素敵でした。


当時の園長先生の言葉
「別に今日思い出したわけじゃないんじゃない?
いつだって心の中にはあったと思う。
それがなにかの拍子にあふれ出てしまったのね。」
これは
大人にも当てはまることだなぁと思いました。
大人でもふと過去の辛い経験を思い出すことってありますよね。
それって、忘れていたわけではなくて
いつだって心の中にはあったことなんだなぁ。
そして
子どもと一緒でその時に、
ただ寄り添ってくれる人がいるだけで
受け止め方が全然違うんですよね。



ほしおさなえさんの作品は
優しいだけではなく、
美しい言葉だけではなく、
大切な気づきを教えてくれる。
とても大好きな作家さんです。



三日月堂シリーズは終わってしまいましたが、
きっと菓子屋横丁シリーズや
何やら新しく始まった紙屋さんのシリーズにも
秘かに弓子さん達が登場してくれることを
楽しみにしています。





本当に大好きなシリーズでした!













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よだかの片想い 島本理生

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生まれつき
顔の左側をおおった青いアザをもつ、
24歳の理系大学院生アイコ。
幼いころからからかいの対象にされ、
恋愛はあきらめていた。
けれど
映画監督の飛坂に出会い・・・





小学生の時に
顔のアザを同級生に「琵琶湖」とからかわれて以来、
ずっと俯いて生きてきたアイコ。
けれど
中学時代の友人から頼まれた
顔にアザやケガのある人たちの
ルポタージュへの参加をしたことをきっかけに、
世界が変わり始めます。

本が話題になり
なんと映画化されることになるのです。


そこで知り合った映画監督の飛坂は、
「アザのあるアイコ」ではなくて、
アイコ自身を見つめてくれる
はじめての男性でした。



当然のごとく
アイコは飛坂に恋をします。
もちろん初恋です♪

恋に落ちたアイコは本当に可愛い。
飛坂とのメールのやり取りに一喜一憂したり、
お洒落に無頓着だったのに
ミュウ先輩と洋服を買いに行ったり。

飛坂との出会いが
アイコの人生を彩り豊かにしていく様子は
とても微笑ましいのです。


いわゆる業界人の飛坂との恋愛は
ちょっぴり切ないのですが、
アイコが強く優しく
そして真っすぐな生き方をしていられるのは、
もちろん
今までの辛い経験もあるけれど、
なによりも
両親の深い愛情の賜物なのではないかなと思いました。
特にアイコの母親は、
とても愛情深く素敵なお母さんです。




そして原田君。
「普通なんてそんなにすばらしいもんでもない」
と言う彼もまた、
素朴で素敵な青年なのです。
私は彼とアイコが上手くいってくれたらいいなと思いました。





アイコがミュウ先輩に言った言葉。

「私はずっとこのアザを通して、他人を見てた。
でも、だからこそ信頼できる人とだけ付き合ってこられたんです。
ミュウ先輩も、その一人です。」



アザをからかわれて過ごしてきたアイコは、
とっても傷ついてきたけれど、
だからこそ
傍にいてくれる人たちは
暖かな心の人ばかりなんだな。。。





飛坂さんとの恋は
なかなか切ないけれど、
ラストの映画のシーンでは
彼と出会えてよかったなと、
心から思いました。

アイコを「夜空」にたとえた場面は
美しくて、
切なくて、
心に響きます。




恋愛って
人を成長させてくれるものでもあるのですね。



今回の島本理生さんの作品も
本当に心に染み入りました。






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クローバー 島本理生

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ワガママで女子力全開の華子と
その暴君な姉に振り回されて、
優柔不断気味な理系男子の冬治。
双子の大学生の
ちょっぴり切ない青春恋愛小説です。




男女の双子の物語って
少女漫画みたいでドキドキしませんか?

双子のきょうだい
華子と冬治は都内の大学に通うため、
実家を離れて二人で暮らしています。

派手で積極的な表の顔とは裏腹に、
極端に自分の素顔にコンプレックスを持っている華子。

華子に主導権を握られ、
尻拭いを余儀なくされる弟の冬治。



読み始めたときは
華子の身勝手さに若干イライラして、
冬治に同情すら感じていたけれど
読み進めるにつれて、
断然私は華子のファンになりました。


強がりだけれど
本当は誰よりも寂しがり屋で、
誰かが傍にいないと駄目な華子。
バイタリティーに溢れていて
コンプレックスを隠すための
努力を惜しまない、
とっても魅力的な女の子です。

そんな華子には
見た目は好みじゃなくても、
大らかな熊野さんがお似合いな気がして
とても微笑ましい。


冬治は優しい性格だけれど
かなり優柔不断で、
実は結構自分勝手というか
狡いところもあるんだな~
なんて思いました。

華子のことをいつも守っているのは自分。
という気持ちが強いように感じだけれど、
本当の所は
お互いさまに助け合っている印象でした。


正直
雪村さんがあんなに冬治のことを
好きになった理由がよくわかりません。
だって
私の中で冬治は、
なにもかもが相手まかせで
一段高いところから人を見ているように感じたから。



雪村さんを怒らせた
「あの行動」なんて、
相手の気持ちを考えなさすぎじゃない?
学生だし、そんなものなのかな?
私には理解できないけど。



冬治には
あまり共感できなかったな・・・





それに引き換え
華子は本当に面白い。

冬治に傷つけられた雪村さんを変身させ、
寝ている冬治の頭上で
「後悔するよ」と、
笑った華子もよかったけれど
一番面白かったのは、
クリスマスの夜
彼氏の家から冬治のところへ逃げ出して来た時。
彼氏との喧嘩云々は置いといて、
なぜか白いコートのしたに
中学の時のセーラー服を着て、
髪を二つ縛りにしていたこと!
冬治が驚いて
「その恰好はなに?」
と聞くと
「こんなことはよくあることだから気にするな」
と華子は答えるのです。

よくあることなのか・・・


もうこのあたりから
私は華子に夢中になってしまいました(笑)




ラスト
気ままな学生生活から決断を迫られた時の冬治は、
少しだけ男らしかったけれど
さてさて
この先この決断を
人のせいにしないで生きていけるのかな?
なんて思ってしまいました。





最後の子ども時代。
大学生の恋愛っていいな♪
都内にきょうだいで二人暮らし。
気ままな生活に
友人たちと集まって飲み会したり。
ちょっぴり切なくて
甘酸っぱい物語に
胸がドキドキしっぱなしでした。








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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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