小川洋子さんの短編集です。
正直なところ
私には作者の伝えたいことが
全く分からない作品もありましたが(恥)、
登場人物の上品な語り口に
とても好感を感じる、
ちょっぴり大人な美しい作品集でした。
ファンタジーではないのだけれど、
どことなく現実離れしたような
不思議な雰囲気を感じさせる独特な作風は
小川洋子さんならではなのでしょうか?
小川洋子さんの作品は他には
「博士の愛した数式」以外読んだことがないので、
よくわかりませんが・・・
私のなかで特によかったのは
表題作の「約束された移動」でした。
ハリウッドスターのBの泊まった部屋からは
決まって1冊の本がなくなっている。
それを自分への合図だと思う客室係の女性のお話。
Bが若手でとても美しい時代から
年老いて落ちぶれてしまいホテルに宿泊しなくなるまで、
30年以上もBの宿泊したスイートルームを掃除している彼女は、
Bの落とした髪の毛を収集し(驚)
名札の裏にしまっているのです。
かなり怖い・・・
Bが抜いていった本を購入して読み込み
Bの出演した映画はコマ単位で毎晩観る。
Bから自分へ託された秘密だと信じ込む彼女の
一方的な妄想がひたすら静かに語られているのだけれど、
私にはとても面白く感じました。
手の届かない存在の人との間に秘密を共有していると信じているのは
私から見ると彼女の妄想なのだけれど、
彼女にとっては真実なのでしょう。
だとしたら
私が真実だと信じていることが、
妄想だったなんてこともあるのかもしれない。
それって
ちょっと怖いかも・・・
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