ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

2020年08月

書店はタイムマシーン 桜庭一樹

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桜庭一樹さんの読書日記第2弾です♪



2007年3月から2008年2月までの
1年間の読書日記。
この年は、
桜庭一樹さんが「赤朽葉家の伝説」で
日本推理作家協会賞を受賞
直木賞の候補にあがり
さらに
新刊「私の男」で
直木賞を受賞するという、
怒涛の1年間なのです。


インタビューや取材
「情熱大陸」の密着など、
とてつもない周辺の変化にも関わらず
桜庭一樹さんの読書量は
変わることなく健在です。


なんと
情熱大陸では、
桜庭さんの自宅も
撮影されていたそうなのです。
ということは、
膨大な量の本も映っていたということですよね。
担当K島氏が、
「魔窟魔窟」と喜んだ書棚が・・・

見たかったな~
インターネットで探してみたけれど、
2008年なんて古すぎるのか
見つけることが出来ませんでした。
トホホ・・・



受賞後にきた
たくさんの取材に対する戸惑いを
自分を読書クラブのOBに見立て、

「私はその中で、けして変わるまいとすること、
絶え間なく考え続けることを
同時にやってのけなければならない。
百年経って老女になるまで。」

と表現するところは
桜庭さんのブレない強さを感じました。


読書クラブについてはこちら





そうそう
「青年のための読書クラブ」発売記念サイン会での
書店員さん達の張り切りっぷりも
とても面白かった!

書店員さん、編集さん、
本が大好きな人たちに囲まれている
桜庭さんが羨ましい。

特に
編集さんたちとの
かなりマニアックな本に関する会話は
相変わらず面白かったです。


今回も
読んでみたい本が沢山で
付箋たっぷり♪


読みたい本の量に対して
読むペースが全く追いつきませんが(笑)
これからも
たくさん読書を楽しんでいきたいと思います。






前作の記事はこちら









桜庭さんのお母さんとおばあちゃんが、
直木賞授賞式のために
着物をどんどん購入するエピソードも
とても面白かったです。
いくつになっても、
親から見たら子どもで心配なのですよね。










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あちらにいる鬼 井上荒野

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小説家の父井上光晴氏と美しい母、
そして
愛人だった瀬戸内寂聴さん。
3人の情愛を巡る不思議な関係を
娘である荒野さんが描いた
衝撃作です。




瀬戸内寂聴さんが出家前は
恋多き女だったことは
有名な話ですが、
井上荒野さんのお父さんとも
関係を持っていたことを、
つい最近まで知りませんでした。

しかも
寂聴さんが出家するきっかけは
光晴さんとの不倫関係を清算するためだったとは、
本当に驚きました。



この作品では
光晴=篤郎
荒野さんの母=笙子
寂聴=みはる(寂光)
荒野=海里
の名称で描かれています。



篤郎とみはるの不倫が始まった時、
海里はまだ5歳でした。
篤郎はみはるとの不倫をしながら、
他にも多数の女性と関係を結ぶ
正直に言ってだらしのない男。
そして嘘ばかり吐くので
「嘘吐きあっちゃん」と
揶揄されているような男性です。

愛人が自殺未遂をしたら怖くなってしまい、
「知り合いの女性がなんか勘違いをして・・・」と
見え見えの嘘を吐き、
妻の笙子に手切れ金を持たせて見舞いに行かせます。

相手の女性の気持ちも
妻の気持ちも全く考えずに。


また篤郎は
みはるには妻自慢を披露し、
笙子にはさりげなく愛人の存在を仄めかすのです。


読んでいて
本当に最低な男だなと思うのですが、
何故だかとても女性にモテるのです。
しかも晩年まで
女性と関係を持つ為に
職権乱用の様な事をしでかし、
周りに迷惑をかけまくります。
それでも
笙子もみはるも
篤郎の子供じみたところを
呆れながらも
篤郎を愛さずにはいられない。

一体どんな男性だったのでしょうか・・・




みはると笙子は
同じ男を愛した「同志」のような、
友人のような
不思議な関係をもちます。
互いに言葉を多く交わさなくても
心のどこかで繋がっているような。

私には
愛人のみはるを意識しながらも
憎むことをしない笙子が
とても不思議でした。

それどころか
愛人たちの何人かとは、
その関係が解消されてからは
友人の様な付き合いをしているのです。


みはるが出家するときも
「自分だったらそうして欲しいから」
篤郎にみはるに付き添ってあげるよう促します。
そして
愛人関係を解消し友人関係になってから
篤郎が死ぬまで3人の関係は続いていくのです。
不倫の時から数えるとすでに26年です。
いえ
寂光(みはる)も2人と同じ墓地を購入しているので
永遠に一緒ということでしょうか。。。




なんとも壮絶な内容を
娘の荒野さんが淡々と描いているので
不思議と嫌悪感を抱くことがなく、
みはると笙子の心情に
静かに寄り添うような気持ちで
読むことが出来ました。


モデルとなった寂聴さんも絶賛されている
本当に凄い作品です。



この本をきっかけに
寂聴さんの若い時の自伝的作品等も
読んでみたいと思いました。



















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まだ温かい鍋を抱いておやすみ 綾瀬まる

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「おいしいもの」を食べることによって、
つらい「今」を乗り越えていく
食べものがたり短編集です。




「ひと匙のはばたき」
はじめて人生に躓き
会社を辞めて
親戚のダイニングバーで店番をしている沙彩が
お店の客として出会った、
生きることが不器用な清水さんと交わす物語。
「嫌われることが一番怖かったけど、
今は、自分のことを自分で決められなくなることの方が
ずっと怖い。」と、
自分の力で生きていこうとする
清水さんが頼もしく思えました。
煮込み料理とワインが食べたくなる
美味しいお話です。



「かなしい食べ物」
同棲を始めた透と灯。
灯が透に作って欲しいとお願いしたのは
ちょっぴり塩気のある
枝豆パンでした。
けれどそれは悲しい思い出とともにある食べ物で・・・
ラストのメリーゴーランドみたいなパン。
どんなものが出来上がるんだろう。



「ミックスミックスピザ」
共働きの主婦早百合は、
夫が鬱で休職中に
会社の同僚と肉体関係を結んでしまいます。
そのときにホテルで食べた
ミックスピザの味が忘れられません。
それは普段
赤、黄、緑、白、黒と5色の食材を使って
家族の為に頭を悩ませながら
料理を作る小百合にとって、
官能的なくらい不健康で、
頭が悪くなりそうなおいしさだったのです。
決して落とせない宝物を背負い、
疲れ、病を得て、無数の問題を引きずり、
死ぬまで口に出来ない弱みまで抱えても
ふたりで歩いていこうと決心する
強い女性の物語。



「ポタージュスープの海を越えて」
日々の子育てと仕事に追われ
疲れた素子と珠理は、
ふたりで旅に出ます。
家族の為に食事を作る毎日で
自分がなにを食べたいかわからなくなってきたふたりは、
旅先で美味しいものを飲んで食べ
幸せを感じます。
ふと、今は亡き自分の母親の好物を知らなかった
ことに気が付き・・・



「シュークリームタワーで待ちあわせ」
気ままな独り暮らしを愛する
料理家の夜子は、
幼馴染の幸が3歳の息子を
事故で亡くし憔悴していることを知り、
自宅に連れ帰り食事の世話をすることにします。
もうこのお話は
幸の息子の将太くんが
可哀想で可哀想で・・・
胸が痛くて辛かったです。
ただ
幸が前を向いてくれて本当によかった。



「大きな鍋の歌」
余命僅かな友人万田を見舞う
松ちゃんは、
人生の辛い節目には
万田に大鍋で料理を作ってもらっていたことを
思い出します。
こんなにお世話になっていたのに、
松ちゃんのドライな考え方に
読みながらイライラしていたら、
なんと実の娘に
「お父さんって時々すっごく鈍感で、無神経だよね。」
「人間関係をマジでバカにしてる。」
と言われた(笑)
でも
万田さんの気持ちには気が付いていたんだ・・・
ラストのロールキャベツが切なかった。






「シュークリームタワーで待ちあわせ」
の中での夜子の気持ち。

苦しい時間を耐えていく人の食卓に
豊かさを作りたい。

生きていくために食べるけれど、
ただ食べているだけでは
人は決して幸せにはなれなくて、
「おいしい」と思える気持ちが
生きていく力となって
苦しくて痛みを伴う日々を
支えてくれるんだなと思いました。






















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最近買った11冊

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大量に積読本を持っているくせに、
本が大好きでついつい購入してしまいます。

けれど
返却期限の迫った
図書館本を優先して読むために、
購入した本は新たな積読本と化し
書棚の肥やしになっていくのです。。。


うぅ、、、
分かっているけど買ってしまう私は
所有欲がとても強いのだと思う。
そして
手に入れて「いつでも読める」状態になることに
満足してしまうのです。



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こちらの2冊は
図書館で借りて読んだのですが



「手元に置いておきたい」と思うほど
気に入ったので購入しました。





長野まゆみさんの「凛一シリーズ」は、
ずっと読みたかった本なので
とても楽しみです。
(1冊在庫切れで買えなかったけど・・・)


あとは
地元テレビ局で
アニメを再放送しているのを見ているうちに、
原作をもう一度きちんと読みたくなった
「赤毛のアン」シリーズや、
恩田陸さんの「理瀬シリーズ」の2作目
「麦の海に沈む果実」などなど・・・




どれも読むのが楽しみ♪



現在図書館で借りている本が落ち着いたら、
積読にも挑んでいこうと思います。









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落日 湊かなえ

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新人脚本家の甲斐千尋は、
初監督作品「一時間前」で国際的な賞を受賞したばかりの
新進気鋭の映画監督、長谷部香から
新作の相談を受けます。

内容は
千尋の生まれ故郷の笹塚町で15年前に起きた
「笹塚町一家殺害事件」
引きこもりの男性が
高校生の妹を自宅で刺殺後、
放火して両親も死に至らしめた残忍な事件です。

既に判決も確定しているこの事件を
香は何故撮りたいのか。
千尋は疑問に思いますが、
実は幼い頃
香も笹岡町に住んでいたことがあったのです。






物語は香が幼稚園に入った頃から始まります。
「田舎を出て都会で暮らしたい。」
香は母親の理想を押しつけられ、
「ドリルの正解率が悪いとベランダに出す。」という
虐待を受けていました。

ある日
ベランダの仕切り板越しに、
隣の部屋でもベランダに出されている
同じ年くらいの子どもの手を見つけます。

一人ぽっちの寂しさの中で、
互いに指先だけで励まし合っていた「ともだち」

その「ともだち」こそが、
笹岡町一家殺害事件で
兄に殺された立石沙良ちゃん。

あの時、
ふたりだけの大切な時間を過ごした沙良ちゃんは
どんな人だったのか?
彼女を殺すに至った兄はどんな人だったのか・
なぜ殺されなければならなかったのか?
そのことを香は知りたかったのです。






事件について調べていくにつれ、
「もう一つの真実」が浮かび上がってきます。


その「真実」の先に「救い」はあるのか?





そして事件は
千尋にも深く関わっていて・・・






児童虐待、育児放棄、いじめ、自殺など
社会的問題が多く含まれており、
とても重く
考えさせられる作品でした。



けれどラストは
辛く複雑な気持ちながらも、
香や千尋に
「救い」と「希望」を感じられたので
「凄い作品を読んでしまった。」
という思いに包まれました。




千尋はちょっと共感できないキャラクター
だったのですが、
自分で能力不足を自覚しているようなので(笑)
この脚本を手掛けることによって、
これからは
努力を怠らず
脚本家への道を歩んでいって欲しいと思いました。


そして香の今後の人生が
幸せなものでありますように。。。






















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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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