ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

2022年10月

あの図書館の彼女たち ジャネット・スケスリン・チャールズ

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1939年パリ。
20歳のオディールは、
アメリカ図書館の司書に採用された。
本好きな彼女は熱心に仕事に取り組み、
女性館長や同僚、
そして個性豊かな図書館の利用者たちとの
絆を深めていく。

しかしドイツとの戦争が始まり、
やがてパリはナチスに占領されてしまう。
オディールたちは、
図書館を利用出来なくなってしまった
ユダヤ人利用者たちのために、
秘密裏に本を届け始める。


1983年アメリカ、モンタナ州フロイド。
12歳の少女リリーは、
「戦争花嫁」と呼ばれる
孤独な隣人オディールと知り合いになる。
リリーはオディールの家に出入りして
フランス語を教わるようになり、
二人の間には
世代を超えた友情が芽生えていく。
ところがリリーは、
しだいにオディールの秘密めいた
過去が気になり始め、
一線を超えてしまう。


1939年からの第二次世界大戦中の話と
1983年からの現代の話が平行して語られる。

厳格だけど愛情深い両親に、
唯一無二の存在である
双子のレミーがいて、
ポールという素敵な恋人もいる。
友人や同僚に囲まれ、
なにより
司書という仕事に誇りを持っていた
オディールが、
なぜ1983年にアメリカで
孤独な生活を過ごしているのか。
疑問が溶けるのと同時に、
戦争が奪っていったものの
大きさと残酷さに、
胸が苦しくなる。

戦時中の密告の手紙。
誰が書いているのかと
互いに疑心暗鬼になり、
張り詰めた空気の中での生活は
どんなに辛いものだっただろう。
また
ナチスと付き合った女性を
丸刈りにして晒し者にすることにより、
自身の鬱憤を晴らし喜ぶ人々に
複雑な感情が沸き起こった。
それほどにまで
戦争は
人を狂わせてしまうのだ。

世代こそ違うけれど、
若き日のオディールとリリーは
「考えるより先に言葉にしてしまう」
などの共通点が多々あり、
たくさんの失敗と
後悔をしてきたオディールは、
リリーが自分と同じ過ちをしないよう
優しく導いていく。

12歳で母親を亡くし、
やがて
継母と義弟と暮らすことになった
リリーの心の中に巣食う孤独と、
重い過去を背負った孤独なオディールが
深い友情で結ばれたことにより、
互いに成長し
救われ
一歩を踏み出していくラストが
とても眩しかった。

オディールとリリーが
自分たちのデューイ分類法の番号を考え、
オディールの本棚を
「わたしたちの棚」に変えるという
ふたりの友情を確信する
場面があるのだけれど、
苦しい物語の中に差し込む
灯台の光のように感じられて
私は一番好きだった。




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ゆうじょこう 村田喜代子

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明治時代
貧しさ故に熊本の遊郭に売られた青井イチは、
硫黄島出身の
きつい島言葉しか知らない15歳の少女だった。
海女の母や姉を恋しく思いながらも、
廓の学校「女紅場」で読み書きを学び
毎日、お師匠さんに日記を書き渡す。
真っ直ぐなイチの書く日記には、
一切の偽りも飾りもなく
事実のみを拙い文章で
赤裸々に書いており、
お師匠さんのみならず
読み手である私も心奪われた。

娼妓の世界というと、
女同士のドロドロとした虐めの世界を
真っ先に想像してしまうが、
本作ではその様なことは一切なく
先輩娼妓から花魁に至るまで、
みんなが助け合って生きている。
その頼もしさは、
物語のラストに決行する
ストライキの際に
存分に発揮される。

当時
「子どもは親の所有物なので
売り買いは自由だ」という考え方によって、
勝手に親が作った借金の
肩代わりをさせられていた
娘たちの苦労と悲哀は、想像を絶する。
「世の中で一番怖ろしいもんは親たい。」
の言葉がとても重かった。
また、「娼妓芸妓は牛馬と異ならず」
という、人権を全く無視した憤慨ものの文句を
この作品を通して初めて知った。
貧しさ故に
親の都合で売られ娼妓となった娘たちは、
ただ「家族のため」という一心で
自身の苦境を受け入れていたのに、
どうしてこのような事を言えたものだろうか。

過酷な運命を逞しく生き抜き
自分たちの足で未来を切り開いたイチたちの
新たな人生が幸福なものでありますようにと、
願わずにはいられなかった。





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9月の購入本紹介

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かなり前に映画は観たのだけれど
原作本を読んでみたくて購入。
どの訳にしようか迷ったのですが、
岩波の新訳にしました。
内容はすっかり忘れてしまっているので、
読むのがとても楽しみです。


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以前「タイプライターズ」で
拝見してから、
ぜひ読みたいと思っていた作家さん。
これからコツコツと読んでいきたい。

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群ようこさんの
読書エッセイが大好きで、
出版されていたものは
すべて購入して読んでいたのですが、
断捨離に取り憑かれていた時期に
手放してしまい、
後にとても後悔していました。
そんな本を久しぶりに見つけ即購入。
目次を見たら、
既読本なのに
ほぼ内容を忘れてしまっていたので、
再購入出来て本当によかったです。

あとは
北村薫と宮部みゆき編の短編集と
蓮見圭一。


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津村記久子さんの
「やりなおし世界文学」を読んでから、
月に1冊は近代文学を
読んでいきたいと思っているので、
気になった本は
購入するようにしています。



以上が9月の購入本でした。





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2022年9月に読んだ本


彼女の家計簿 原田ひ香

外套・鼻 ゴーゴリ

剣持麗子のワンナイト推理 新川帆立

朗読者 ベルンハルト・シュリンク

台所太平記 谷崎潤一郎

その本は 又吉直樹 ヨシタケシンスケ

バベットの晩餐会 イサク・ディネーセン


以上7冊でした。


今月のイチオシ本は



ベルンハルト・シュリンクの朗読者です。

前半の濃密な関係からの
突然の別離。
予想だにしない場所によって迎える
悲しい再会。
久しぶりに
こんなにも切なく悲しい
愛の物語を読みました。
映画もとても素晴らしいので、
原作を読んだ後に観ることを
おすすめします。






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ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 (プライムビデオ)




1940年、第二次世界大戦初期。
ナチス・ドイツの勢力が拡大し
フランスは陥落間近、
イギリスにも侵略の脅威が迫っていた。

連合軍がダンケルクの海岸で
窮地に追い込まれるなか、
ヨーロッパの運命は
新たに就任したばかりの
英国首相ウィンストン・チャーチルの
手に委ねられる。

度重なる失策から「政界一の嫌われ者」
であったチャーチルは、
政敵たちに追い詰められながら
世界にとって究極の選択を迫られる。
ヒトラーに屈するのか、
あるいは戦うのか。



ウィンストン・チャーチルが
英国首相に就任してから、
ダンケルクの戦いに至るまでの
「27日間」のみを描いた映画。



『成功も失敗も終わりではない。
肝心なのは続ける勇気だ。』

数々の失敗から這い上がり
世界を救ったチャーチルは、
自身のこの言葉の通り
常に前を向いて行動していくが、
なかなか周囲の
理解を得られない。
タヌキのような風貌とは裏腹に
人の心を掴む演説の達人でもあった
チャーチルの見えざる苦悩が
とても印象的だった。

「和平か交戦か」
究極の選択を迫られ、
自分の信念に反して
和平への道を選ぼうとした
チャーチルに対して、
今までチャーチルと距離を置いていた
ジョージ6世が見せた男気に、
最高に痺れた。
このときの会話によって、
チャーチルは初めて味方を得て
彼の背中は完全に押されたのだ。

この後に行われた演説は
鳥肌モノだった。

また
どんなときも
チャーチルを支え続けた妻の存在も
とても大きい。
妻も
夫自身とその信念を
信じることを「続けた」のだ。
こんな妻に私はなれそうもない。

「勇敢に戦って破れた国は
また起き上がれるが、
逃げ出した国に未来はない。」

チャーチルの信念をこれ以上に
表した言葉はないだろう。
そしてそれは
歴史が証明している。

とても素晴らしい映画だった。


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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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