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1938年9月30日。
ミュンヘン会談により
戦争が回避されたと
欧米諸国が歓喜に湧いたその日、
日本大使館外務書記生である
27歳の棚倉慎はポーランドに赴任した。

ロシア人の父を持つ慎は、
その外見により幼い頃から
謂れのない差別を受けてきた。

彼がポーランドで初めて出来た友人、
ヤン・フリードマンも
国籍はポーランドだけれど、
人種的にはユダヤ人という
曖昧な自身の立場に
葛藤を抱いていた。
アイデンティティに悩む二人は
深い友情と縁で結ばれる。

そして物語の重要な要となるのが、
慎が子ども時代に
自宅の庭に迷い込んできた
ポーランド人の少年カミル。

当時、ロシア軍に両親を殺された
シベリアに住むポーランド人孤児たちは、
一時的に日本で保護されていたのだ。
彼から秘密の告白をされていた慎は、
常にカミルのことを
心に秘めていた。
ポーランドで極東青年会のリーダー、
イエジに彼の消息を調べてもらうが
行方不明だった。

親日の国ポーランドで
イエジ達との親交を深めるうちに、
いつしか
「彼らの期待に応えられる
日本人でありたい。」
と、強く願うようになる慎。
ポーランドに来て
生まれて初めて、
自分が日本人であると思えたのだ。

自国を愛し自分を信じてくれる
ポーランドの友人たちとの出会いにより、
戦火に染まるワルシャワで
慎は大きな決断をする。



美しいワルシャワの風景は、
ドイツ軍の侵攻により一変する。

美しい街は破壊され、
ユダヤ人への強烈な弾圧、
そして民間人への殺戮が始まる。

カティンの森事件
ゲットー蜂起
ワルシャワ蜂起

私は世界史の授業中
何をしていたのだろうか。
これらの恐ろしい
歴史的事実を
何ひとつ知らなかった。

後半はとても辛い内容が
続くのだけれど、
この作品は現在起きている
ロシアによるウクライナ侵攻と
重なるところが多い。
だからこそ今、
絶対に読まなければならないと思い、
数日かけて読み終えた。


戦闘は無駄なものだ。
理念がどれほど崇高であろうが、
実現するための戦闘は
ただただ残酷だ。
そして
戦うことにのみ
意味を見いだすようになったら、
それはもう破綻しているのだ。
我々は常に、
戦闘が終結した後のことを考えて
行動しなければならない。

蜂起の最中に
イエジが部下たちに行った言葉だ。
この言葉が
一人でも多くの人に届きますように。








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