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江戸・深川の料理屋「ふね屋」。
店の船出を飾る宴を催している最中、
突然、抜き身の刀が暴れ出し
座敷を滅茶苦茶にしてしまう。
亡者の姿は誰にも見えなかった。

けれど
ふね屋の12歳の娘「おりん」は、
高熱を出して
彼岸を渡りかけて以来、
亡者が見えるようになっていた。

おりんが座敷で見た亡者は、
泣きながら暴れる
おどろ髪の亡者だった。

ふね屋には他にも
美男の若侍・艶やかな美女・按摩の老人、
そして
あかんべえをする少女と、
5人もの亡者が迷っていた。

亡者と心を通わせていくうちに
おりんは、
ふね屋の怪異が
30年前にここで起きた
忌まわしい事件に関わっていることに
気がつく。

おりんは、
お父ちゃんとお母ちゃんの
願いがこもった
ふね屋の窮地を救うため、
亡者たちの成仏の手助けを始める。
ところが
また亡者による事件が
ふね屋で起きてしまう。

読んでいて強く感じたのは、
おりんちゃんの健気さだ。
この時代の12歳は今の子より
大人びていたのだろうか。
我儘もいわずに
商売をしている両親のことを
いつも心配し、
助けてあげたいと願う
とても優しい娘なのだ。

おりんが心通わせる、
ふね屋の亡者たちも
とても個性的だけど優しい。
おりんが彼らを
親しみを込めて、
「お化けさん」と呼ぶ様子も
とても可愛らしかった。

自分たちの死の際を
忘れてしまっており、
どうして成仏できないのか
分からない亡者たち。
本当に自分は真相を知って
成仏したいのかと、
密かに悩む姿が哀しかった。

また
「亡者が見えることには理由がある」
ということに
おりんが気がついたことから、
物語は怪奇現象以外にも
不穏な空気が漂ってくる。

やっぱり
一番怖いのは人間なのだなと
改めて思ったのだった。


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