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初・浅田次郎は短編集から。
6篇が収録されている。

どの作品も、
じんわりと心に沁み込んでくる
読了感。
好みだった。

それだけに、
帯の「最多涙小説」云々は
要らないだろうと、
モヤモヤ感が残る。

私はこの6篇を
ただの一度も泣かなかったけれど、
とても感慨深く読んだぞ。
「泣き」煽りは苦手だ。


『夕映え天使』
古びた中華料理屋で
住み込みで働いていた
訳あり風の女性。
軽井沢の警察からの
問い合わせの電話は、
1年前
突然姿を消してしまった
彼女の事なのか。
彼女に思いを残していた
主人公は、
軽井沢へと向かう。

『切符』
東京オリンピック
開幕直前の東京。
小学生の広志は
両親に捨てられ、
祖父とふたりで暮らしている。
「子供にとってはどうしようもないことでも、
本当は大人ならば何とか出来るはずだ。
少なくとも約束は破らないですむはずだ。」
大人の身勝手に振り回される
広志の胸の叫びが切なかった。

『特別な一日』
定年退職する男性の一日を
描いているのかと思いきや、
突如
玉音放送が流れ出し
頭が混乱した。
「今日を特別な一日にしない」
というのは、
世界中の思いだったのか。
まさかのラストは
かなりの余韻が残った。
普段読まないけれど、
こんなSFだったら好きかも。

『琥珀』
定年退職を目前に控え、
三陸にひとり旅した警官。
漁師町で寒さしのぎに
入った喫茶店の店主は、
交番の手配書で
見慣れたあの顔だった。

『丘の上の白い家』
丘の上の白い家に住む
裕福な少女と、
丘の下に住む
貧しい高校生の人生が
交わった時、
悲劇は起きる。

『樹海の人』
著者自身の
自衛隊入隊時の経験をもとに
描かれた作品。
辛い訓練中に体験した
不思議な出来事を描いている。


『切符』と『丘の上の白い家』の
2作品が特に好みだった。

初めて読んだ
浅田次郎作品。
登場人物の心情が
豊かに描かれていて、
とても味わい深い
奥行きの感じられる
短編集だった。
今度は時代小説も読んでみたい。




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