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図書館司書の青田類子が、
電車で
とある場所に向かいながら、
過去を回想していく。

類子は中学生時代、
豊満な身体から
溢れ出る性的魅力ゆえに
女子生徒に嫌われていた
美少女・阿佐緒と、
生徒会副会長を務め
みんなの人気者で、
成績優秀の美しい少年・正巳と
親しくしていた。

類子は密かに
正巳に好意を寄せていたけれど、
正巳が愛していたのは
阿佐緒だった。

この3人が
十数年の時を経て
偶然再会したとき、
運命の歯車が動き出す。

親よりも年上の男性と結婚し、
三島由紀夫邸を寸分違わず
模倣した屋敷に住む阿佐緒。

妻子ある男性と
肉欲だけの関係に溺れながら、
再会した正巳に
強く惹かれていく類子。

そして
美しい青年に成長した正巳は、
学生時代に巻き込まれた
事故による怪我の影響で、
性的不能者となっていた。

叶うことのない
阿佐緒への想いを、
未だに持ち続ける正巳。
そんな正巳を
肉欲ではなく心から愛してゆく類子。

正巳の秘密を唯一
打ち明けられている類子の、
やるせない気持ちが切ない。

自分の思い込みに囚われ、
次第に自身を失っていく阿佐緒。

自らの欲望が叶わずに
深い絶望を抱き続ける正巳。

彼らの苦しみが
これでもかと襲いかかってくる。

心が通じ合っているだけでは
駄目だったのだろうか。
行き場の失われた欲望を抱えて
生きていくということは、
それ程までの絶望だったのだろうか。

類子に感情移入しながら
読んでいたので、
ただただ哀しかった。

作中、象徴的に何冊も出てくる
三島由紀夫の作品を、
読んでみたいと思った。


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