ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

三浦綾子

細川ガラシャ夫人 上・下 三浦綾子

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明智光秀の娘・玉子(後に洗礼をしてガラシャ)
の生涯を描いた作品。

上巻は主に、
明智光秀について
詳しく描かれている。
冒頭の妻の熙子との
結婚のエピソードから、
光秀に抱いていた
『裏切り者』という
私の中のイメージが、
ガタガタと崩れ落ちた。

優しく真面目で頭が良い。
そして、
この時代に
側室を持たずに、
生涯妻ただ一人を
愛し続けた、
非常に愛情深い人物像に
強い魅力を感じた。

優しい父母のもと、
何不自由なく
伸び伸びと育てられた
玉子は、
誰もが見惚れるほどの
美しい少女へと
成長していた。

しかし
その美しさ故に、
後の夫・細川忠興の
強い嫉妬心を膨らませる
こととなる。

下巻からは、
父・光秀の起こした
本能寺の変のために、
逆臣の娘として
苦難の日々を過ごす
玉子の姿が
描かれている。

光秀が、
本能寺の変へと
突き進まざるを得なかった
状況が、
苦しくてたまらない。

父母一族を亡くし、
夫や子どもとも引き離され
山奥で幽閉生活を過ごす
ことになった玉子は、
徐々に
キリスト教の教えへと
導かれていく。

しかし、
幽閉が解けてからも
玉子の美しさを
誰にも見せたくない忠興は、
玉子の外出を
厳しく禁じていたために、
短い生涯のうちに
玉子が教会へ行けたのは、
ただの一度だけだった。

細川邸の自室で、
侍女たちと共に
一心にキリスト教を学ぶ
玉子は、
秀吉による
キリシタン弾圧の最中、
夫・忠興の眼を盗み
決意の洗礼を受ける。

不自由な中でも
自身の信仰を大切に
守り続ける玉子が
迎えることになる、
壮絶で悲劇的な最期。
侍女たちとの
別れの場面では、
涙が溢れすぎて
眉間が痛くなってしまった。

結婚以来、
狂気じみた玉子への執着に
取り憑かれていた忠興が、
愛する玉子を失って
初めて安らぎを感じた
というラストに、
愛情表現は
不器用だったけれど、
彼なりに
玉子のことを
心底愛していたことを
改めて感じた。

私は、
恐らく架空の人物
だろうけれど、
輿入れ前から
密かに玉子を愛し、
常に陰で彼女を
見守っていた初之助が、
とても愛おしくて
たまらなかった。
そして
彼自身が選択した最期に、
深く胸を打たれた。
もしかしたら、
本当にこの様な人物も
存在したのではないかと
思えるほど、
玉子は魅力的な女性だった。


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続 泥流地帯 三浦綾子

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突然噴火した十勝岳の泥流は
開拓部落に襲いかかり、
一瞬にして家族の命を奪い、
田畑を石河原に変えた。

続編は泥流に流されて
亡くなった人々の村葬から始まる。
泥流の犠牲者144名の中には、
耕作たちの祖父母・姉・妹も
含まれていた。

上富良野に入植し
30年の開拓の苦労の末、
ようやく暮らしが楽になってきた矢先に
全てを泥流に飲み込まれ、
その命も失ってしまった
勤勉で優しい祖父母。

耕作のために
自分の結婚を
伸ばそうとしてくれた姉の富。
しかし念願の結婚生活は
姑に虐められ不幸だった。
家にいられずに火口近くで炊事婦として
働いていたために犠牲になった。

妹の良子は
ようやく母親が帰ってくると
喜びに満ちた夜を過ごした翌日に、
泥流に流されて亡くなった。
死化粧が最初で最後の化粧となった。
死に顔すら母親に見てもらえなかった。

胸が苦しくて
苦しくてたまらなかった。
目頭が熱くなり過ぎて頭痛がした。
しかし
この物語はフィクションでも
大正15年の十勝岳の噴火では、
同じように被害に遭われた方たちが
大勢いたのだろう。
何ともやり切れない気持ちに包まれた。

地獄と化した泥流の地から
離散していく人々もいるなかで、
拓一は祖父たちの苦労を無駄にすまいと
土地の復興に励むが、
耕作は都会にでて
みんなで働いた方が、
良い暮らしが出来るのではないかと考える。

そんな耕作のことを
否定することなく拓一は、
「耕作の言うことはもっともだ。
耕作の言うことには筋が通っている。
お前は頭で考えるからなあ。
だがな
俺は心で考えたいんだ・・・」
と語る。

拓一は絶対に他人の意見を
批判することなく理解して、
そのうえで自分の思いを行動で表す。
物凄く男らしくて、
私は主人公の耕作ではなく
完全に拓一に感情移入して読んでしまった。

もちろん耕作も
そんな兄のことを誰よりも尊敬しており、
学校へ勤めに出る前の早朝から
帰宅後暗くなるまで、
拓一の開拓の手伝いをする。
(複雑な気持ちも抱きつつ・・・)

「大変だからと言って投げだせば、
そりゃあ簡単だ。
しかしなあ俺は思うんだ。
大変な時にこそ持ちこたえる
馬鹿がいないと、
この世は発展しないんじゃないか。
俺はその馬鹿になるよ。」
こう語り、実行する拓一は
村長をはじめとする復興組でも
一目置かれる存在となるが、
いまや村は復興反対組と二分割されており
反対組から理不尽な嫌がらせを受ける。

どんな時代にでも深城のように
金に汚い人間はいるものだということを
つくづく感じた。
そして美味しい思いをし続けるのだろうか。
いつか痛い目に遭って欲しいと
思わずにはいられなかった。

現実は確かに
「善因善果」「悪因悪果」では
ないのかもしれない。
けれど
拓一にはあまりにも非情な試練で、
ささやかな希望は見えたものの
その後
幸せな人生を送れたのか、
とても気になる。
それは深城の餌食となっていた
福子も併せてのことだ。
耕作はきっと上手く生きていくのだろうな。

何度も読み返したいと思った作品だった。




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泥流地帯 三浦綾子

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大正15年5月に起きた
北海道十勝岳大噴火を題材にした、
フィクション小説。

北海道上富良野の日進部落で
貧しく厳しい暮らしのなか、
明るく誠実に生きている
一家を描いている。

父は早くに亡くなり、
母は手に職を得るために
札幌へ旅立った。
明治時代に開拓のため入植して以来、
勤勉に働いてきた物知りの祖父に
優しい祖母と姉の富。
真面目で喧嘩が強く
働き者の兄・拓一に、
可愛い妹の良子。
物語を語る主人公は
次男の耕作だ。

耕作は勉強好きで
とても優秀だけれど、
貧しさゆえに
希望する道に進むことが難しく
苦労するが、
同級生で仲良しの福子を襲う悲劇は
言葉にならない。
貧しさだけが問題ではない。
親の怠慢と不甲斐なさに
強い憤りを感じた。

「じっちゃん、金持ちって偉いんか」
子ども達の疑問に祖父は
「金の多い少ないは
人間の偉さには関係はねえ。
金持ちにも貧乏人にも、
馬鹿もいれば立派なのもいる。
問題は、目に見えるものが問題じゃねえ。
目に見えないものが大切じゃ。」
と答える。

そんな祖父母に暖かく見守られている
耕作たち家族は、
貧しいけれど
心は豊かで幸せに暮らしていた。

十勝岳の噴火までは・・・

最初から泥流に流されると
分かってはいたが、
まさか
こんな幸せの絶頂でとは、
あまりにもショックだった。

ひたすら真面目に
暮らしていた人びとを
突如襲った悲劇は、
理不尽という言葉以外に
当てはまる言葉はない。
そして
改めて自然災害の恐ろしさについて
考えさせられた。

続編は泥流に襲われた後の
復興が描かれている。
兄弟のこれからの生き方、
そして
福子や節子との恋模様も見逃せない。





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塩狩峠 三浦綾子

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明治末年
結納のため札幌に向かった
鉄道職員永野信夫の乗った列車が、
北海道旭川の塩狩峠で
突然客車が離れ暴走した。

信夫は客車を止めるために
自らの命を犠牲にして
大勢の乗客の命を救った。

この作品は
永野信夫の幼少期から
キリスト教に入信し
犠牲の死を遂げるまでの、
愛と信仰に貫かれた生涯を描いている。




信夫は、母親が自分を産んだ際に死んだため
士族の誇りに満ち溢れた
厳格な祖母に育てられていたが、
ある出来事から
実は母親はヤソ(キリスト教信者)
だったために祖母に家を追い出され、
近くで生きていたことを知る。

祖母の死後
両親と妹と4人で暮らすようになるが、
信仰のために
自分を捨てた母親に対して
心の中でわだかまりを
抱えていた信夫は、
母親に対して
素直に甘えることが出来ない。
また、家族が自分以外
キリスト教信者であることから
疎外感を感じることが多く、
「生きるとは、死ぬとはどういうことか。」
と、悩みながら成長する過程が
非常に印象深かった。

多感な時期に
良き兄貴分になってくれた
親戚の隆士や、
小学生からの親友吉川の存在が
悩み多き信夫にとって
大きな支えとなっていたのでは
ないかと思った。
特に親友の吉川との関係性は
家族以上のものであり、
信夫の後の人生に
大きな影響を与えていく。

もともとキリスト教に対して
反発心を抱いていた信夫が入信するのは、
大人になってからだ。


「一粒の麦、
地に落ちて死なずば、
唯一つにて在らん、
もし死なば、
多くの実を結ぶべし。」

作中に引用されている
聖書の言葉で、
物語にとって重要な意味を成している。

信夫の行った自己犠牲については
賛否両論あると思うが、
個人的には
残された人々の心情を想うと
いたたまれない気持ちになる。
やはり生きているからこそ
為せることもあるのではないかと
思えてならないのだ。
こんなに「犠牲」について考えたのは
初めてかもしれない。
とはいえ
やはり信夫の生き方はとても美しく、
愛に満ち溢れている。
久しぶりに心が洗われたような
気持ちになった。











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一日の苦労は、その日だけで十分です 三浦綾子

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実は
私は三浦綾子さんの小説を
読んだことがありません。

もちろん
「氷点」や「銃口」など代表作の内容は
把握していますが、
知識としてという範囲です。

なぜかというと
私の中での三浦作品は、
やはりその内容の重さ、深さから
心の元気が満タンではないと
読み始めることが出来ないからです。
軽い気持ちで手に取ってしまうと、
気持ちを持っていかれてしまい
恐らく
家族の夜ご飯の支度は
出来なくなってしまうことでしょう。。。
(なんというヘタレ根性でしょうか・・・)



なので興味はありつつも
敬遠していた三浦綾子さんですが、
今回は入門編として
その人となりを知るために
エッセイから手に取ってみました。




人間の罪、弱さ、ゆるしを描き続けた
三浦綾子さんのエッセイは、
とても愛にあふれた作品でした。

「エッセイだから軽く読めるかな?」
なんて
軽い気持ちで手に取った私は
打ちのめされた気持ちになりました。

周知のとおり
三浦さんの人生は
病多きものでした。
壮絶な闘病生活。
愛し合いながらも死に別れてしまった
恋人への思い。
そして夫、三浦光世さんとの出会い。
そのすべてが
三浦さんの言葉で語られている
とても素晴らしい作品でした。

こんなにも苦労を重ねているのに、
「すべてが神様からの贈り物」と
考える三浦さんの心の強さ。


クリスチャンである三浦さんの
聖書を引用した言葉は、
聖書を読んだことのない私の胸にも
響くものでした。

この作品を読み
三浦さんの元恋人、前川さんや
夫の三浦光世さんのことも
もっと知りたいと思ったので、
是非
他のエッセイも読んでいきたいと思います。

そして小説も。。。
読んでいきたいと思いました。









プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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