ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

日本人作家 か行

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

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高校生の斎藤くんは、
年上の主婦『あんず』との
不倫コスプレセックスに
のめり込んだ挙げ句に
動画と写真をばら撒かれ、
不登校になり
自宅に引きこもってしまう。

不倫相手のあんずは、
姑に不妊治療を強要されていた。
また夫は、
どう見てもストーカーの
ヤバいやつで、
あんずの不倫を疑い
家中に監視カメラを設置する。

斎藤くんのことが大好きな
同級生の松永は、
自身の兄が宗教団体の
代表の妻と関係を持ってしまい
自宅に連れ戻されており、
斎藤くんの友達の福田は、
実は貧困に苦しんでおり、
その捌け口に
斎藤くんの写真をコピーして
こっそりばら撒いていた。

そして
自宅で助産院を営む
斎藤くんの母親は、
嫌がらせに合いながらも
息子のことを案じつつ、
誇りを持って
助産院を営み続けていた。

『これでもか』というくらい
生きづらそうな
登場人物が
次々と出てくるので、
とっても読むことが苦しい
5つの連作短編集だった。

濃密な性描写も多いうえに、
人でなしの様な
嫌がらせ行為が続くので、
幾度となく
胸が引き裂かれるような
気持ちになった。

生きていると必ず
『やっかいなもの』
を抱えてしまうけれど、
ここまで
『やっかいなもの』によって
転落してしまったら、
自分自身の力で
反転させることが
出来るだろうか。
私には無理かもしれないと、
どうしても思ってしまう。
けれど
それが出来るのは
やっぱり
自分だけなんだよな。

希望の兆しが
薄っすらと感じられる
終わり方に、
ほんの少しだけ
救われた気持ちになった。(かな?)




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光秀の定理 垣根涼介

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若き兵法者の新九郎と
辻賭博を行う破戒僧・愚息は、
ある出来事をきっかけに
牢人中の明智光秀と親しくなる。

光秀が幕臣となった後も
三人は交流を続ける。
やがて織田信長に仕え、
着々と出世していく
光秀の姿を、
光秀自身の
心情と合わせて、
友人である
新九郎・愚息の
視点から描かれた、
明智光秀の半生の物語。

明智光秀の苦労や苦悩、
そして
妻への深い愛とともに、
若き新九郎の成長物語が
同時に描かれている。

最初は頼りなかった新九郎が、
とても頼もしい存在へと
成長していく様子には、
ついつい目尻がさがってしまった。
保護者的存在でもあり、
親友でもある愚息も
同じ気持ちだっただろう。

タイトルに『定理』とある様に、
愚息から出された問題が
物語の重要な鍵となり、
信長をも交えた
謎解きには、
思わず笑みが溢れた。

もし
彼らが実在していたら、
本能寺の変へと
突き進んで行く光秀に、
どんな助言をしたのだろう。

本能寺の変については
描かれずに、
その死後を
新九郎と愚息が
語り合うという
切り口も面白い。
新九郎と愚息が、
最後まで
光秀への友情を大切に
していたことも嬉しかった。

以前『細川ガラシャ婦人』を
読んだときに、
光秀の親友でありながら
友を見捨てた
細川藤孝に対して、
お家を守るために
仕方なかったとはいえ
複雑な思いを抱いたのだけれど、
本作品を読み
人脈や様々な裏工作を
ずっとしてきたからこそ、
江戸時代まで家を
存続させられたのだなと、
ある意味その怪物ぶりに
圧倒されてしまった。

『生き方を変えられぬ者は、生き残れぬ』
という愚息の言葉が、
戦国時代を象徴しているようで
胸に沁みた。


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キッドナップ・ツアー 角田光代

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小学5年生のハルは、
夏休みの初日に
父親に『ユウカイ』され、
ひと夏を過ごす。

2ヶ月前から
別居か離婚かは不明だが
家からいなくなっていた
父親は、
ハルを返すことの条件に
お母さんに何か要求を
しているのだけれど、
その内容は
最後まで不明だ。

どう贔屓目に見ても
毒親としか思えない、
妻や娘の感情を
全く無視した
父親の身勝手な行動に、
終始
イライラさせられるのだけれど、
ハルの視点からだと
『勝手で腹は立つけれど、
なんだか気の毒なお父さん』
と感じるらしい。

計画性皆無の
父親との旅は、
波乱万丈サバイバル満載だ。
ハルには
魅力的だったのだろうけれど、
私には絶対無理だな。

とにかく私は
この父親のことが嫌いだ。

娘のことを『あんた』と
呼ぶことにも嫌悪感を覚えるし、
娘にひもじい思いを
させているくせに、
自分のビールは最後まで
きっちり買っているところも、
本当に嫌だ。
おそらく私は
無意識のうちに、
ハルの母親の視点にたち
読んでいたのかもしれない。

けれど
ラストにハルが父親を
『大好きだ』と
思ったということは、
ハル(娘)にとって彼は
やっぱり
唯一無二の父親だったのだろう。


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彼女のこんだて帖 角田光代

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美味しい料理が
物語を繋いでいく
連作短編集。

登場人物たちは
ごく普通の人々。
OLや主婦、大学生などなど
平凡な人たちが、
日常に抱いた
後悔や躓きを、
料理を作り
食べることによって、
心に変化が生まれ
前向きに進んで行く。

前作の登場人物が
次作の主人公になり
どんどん物語が繋がっていくので、
既出の主人公の
その後が分かって
ほっこりするという、
幸せな仕掛けつき。

とても短い短編が
15編収録されているけれど、
どの作品も共感できるうえに
心がポカポカとする終わり方で、
何度も読み返したくなる
短編集だった。

後半に掲載されている、
写真付きのレシピも
とても美味しそうで、
どれも作ってみたくなる。

美味しい料理は、
幸せを生み
心を繋ぐ。
私も面倒くさがってばかりいないで、
日々の御飯作りを
もっと楽しんで行きたいと思った。



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ナニカアル 桐野夏生

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林芙美子の死後40年近く経て、
隠されていた芙美子直筆の手記が
見つかったことから物語が始まる。

手記には
昭和17年、芙美子が陸軍の嘱託として
文章で戦意高揚に努めるために、
南方に長く出掛けていた
時のことが鮮明に書かれていた。

国際法違反の
偽装病院船に乗り、
敵艦に恐れながらの長旅の最中に
船員との逢瀬に夢中になり、
上陸後に作家仲間が
「あなたは軍に睨まれているのではないか。
気をつけたほうが良い。」
と、忠告してくれたのにも関わらず、
それを気にも留めずに
今度は年下の愛人、
新聞記者の斎藤謙太郎との
南方での再会に歓喜し、
彼との逢瀬に夢中になる。

日本で夫が待っているのに、
随分奔放すぎやしないかと
少々呆れながら読んでいたけれど、
やがて全てのことが
軍に仕組まれているのではないかと
不安になってくる。
脳天気で周りが見えていない
危機感ゼロの芙美子に、
苛立ちしか感じなかった。

決定的な出来事により
突如訪れた別れに、
子どもを巡る芙美子の決断。
この手記は勿論創作なのだろうけれど、
芙美子に対して
最後まで共感は抱けなかった。
そして陸軍の陰湿さには
鳥肌が立った。

(2022年12月読了本)



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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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