ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

日本人作家 あ行

はなとゆめ 冲方丁

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大河ドラマ『光る君へ』を
より楽しむため、
長期積読本だった本書を
ようやく手に取った。

恐らく
『光る君へ』を観る前に
読んでいたら、
人物相関図が分からずに
四苦八苦しただろう。
基礎知識がある今、
読んで本当に良かった。

清少納言がいかにして
中宮定子に仕えることになったのか。
そして
清少納言が忠誠を貫き通した
中宮定子が、
どれほど
素晴らしい人物であったのか。

この世の栄華を
手にしていた
中関白家が、
道隆が亡くなった後に
藤原家内での
激しい勢力争いに
巻き込まれ、
没落していく様子。

全てが
『枕草子』の作者・清少納言の
視点から描かれている。

本作で描かれている
清少納言は、
偉大な歌人である父や
自身の容姿に対して
劣等感を抱いているという、
繊細な一面を持っている。
そんな清少納言に、
自信と輝きを与えてくれたのが
最愛の中宮定子だった。
中宮定子から
貰った紙に
何を書こうか、
長い月日悩み続けた
清少納言が、
『枕草子』を書くことになった
きっかけが、
あまりにも
悲しく切ないことに
驚いた。

華々しい
藤原道長の影に
ひっそりと隠れた印象の
中関白家の栄華と没落。
そして
中宮定子の最期までが
詳しく描かれた、
素晴らしい作品だった。

大河では、
これから登場する
中宮定子の兄弟と、
道長との攻防が
どの様に描かれていくのか、
楽しみだなぁ。



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ノボさん 上・下 伊集院静

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松山から上京し、
東京大学予備門に進学した
若かりし日の正岡子規から、
結核から
カリエスに侵され、
寝たきりになってしまった
晩年とその死までが、
夏目漱石や高浜虚子ら
多くの仲間との
交友とともに描かれている。

アメリカから
伝わってきたばかりの
『べーすぼーる』に熱中する、
元気溌剌の青年時代。
優しくて賢く
面倒見のとても良い、
地元松山でも
評判の好青年『ノボさん』こと子規。

同級生で
秀才と誉れ高い、
夏目金之助と落語が縁で
意気投合し、
その仲は
子規が死ぬまで続く。
ふたりで旅行をして
子規の実家を訪ねたり、
わずか52日間であるが
同居をするなど、
相当親密だった
ふたりの様子が随所に伺える。

そして
漱石のロンドン留学中に訪れた
永遠の別れ。

小説を断念し、
俳句と短歌に心血を注ぐ。
大学を中退し
新聞社に入るが、
自ら志願した
従軍取材により
体調を悪化させ、
寝たきりとなってしまう。

血を吐いたことから
時鳥の別称『子規』と
名を改め、
病の進行とともに
朗らかだった性格が
一変してしまったことが、
とても悲しかった。

薬もなく、
ただ栄養をとり
傷口を洗うのみの
治療なのだから、
医療の進化した現在とは
病による
痛みの具合など、
全く状況が違っていることは
分かってはいるけれど、
ひたすらに
看病をして
子規に尽くしていた
母の八重や妹の律のことを思うと、
胸が引き裂かれそうな
気持ちになった。

自分たちは
わずかな冷や飯に
お新香で
ササッと食事をし、
子規の看病のために
まとまった睡眠も
取れないのに、
子規はわがまま放題に
鰻や高価な果物を
バクバクと食べ、
看病が悪いだなんだと
喚き暴れ叫び、
新聞に
妹の悪口を書き立てる。

行き場のない
溢れ出る辛い気持ち。
仕方のないことだ。
自分だって
その様な行動を
しないとは言えないと
分かってはいるけれど、
ちょっとガッカリした。
彼女たちにとって、
「自慢の息子で兄だったろうにな」
とも読みながら思った。

しかし
母親の八重は子規の死後、
驚きの言葉を発するのだ。
母とはこうあるものなのか。
私には
絶対言えない言葉だと、
狭量な自身の心に
恥ずかしさを感じた。

それにしても、
この時代(明治)って
お金に無頓着な人、
多くない?
漱石の小説にも
登場人物によくいるし。
いくら素晴らしい人でも、
お金にだらしないと
ちょっと幻滅してしまう私は、
やはり狭量なのだ。


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輪舞曲 朝井まかて

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松井須磨子の後を継ぐと目され
大正時代を駆け抜けた、
新劇女優・伊澤蘭奢を
描いた作品。

物語は
蘭奢の死後、
彼女に関わった
4人の男性が集まる
ところから始まる。

蘭奢の愛人兼パトロンの内藤。
彼女が人妻だった頃からの恋人・徳川夢声。
帝大の文学青年・福田。
そして
生き別れの息子・佐喜雄。

彼ら4人は皆、
実在した人物である。

彼らが語る
生前の伊澤蘭奢は、
それぞれ違った
一面を持っているけれど、
一心に
自身の情熱に生きたその姿に、
違いはない。

若かりし日の
生きづらそうだった彼女が、
息子を置き去りにしてまで
一人上京し、
舞台女優を目指した熱い情熱。
こうした行為に対して
確かに賛否両論は
沸き起こるだろうけれど、
そうせざるを得なかった
その時の彼女の心情は、
よくよく読めば
察するに余りある。

トーキー映画が輸入されたことにより
活弁士が危機に陥った状況や、
舞台役者たちの
知られざる苦悩も
描かれており、
伊澤蘭奢の生涯と合わせて
詳しく知ることが出来た。
大正ロマンたっぷりの
素晴らしい作品だった。



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イッツ・オンリー・トーク 絲山秋子

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中篇2作品が収録されている。

『イッツ・オンリー・トーク』
著者のデビュー作。

躁鬱に悩まされている
橘優子が、
引っ越してきた
蒲田の街で繰り返す、
出会いと別れを
描いている。

大学の友人だった
EDの議員に、
鬱病のヤクザ、
自殺未遂の未遂の
居候いとこに、痴漢。

どう考えても
『普通』ではない
人びととの交流。
けれど
理由はそれぞれ違うけれど、
みんな優子の元を去っていく。

『全てはムダ話』だと
歌い流しながら、
物語は終わる。
全体的に
不穏な空気を纏っているが、
その空気感が
とても好みだった。


『第七障害』
高崎で乗馬に
励んでいた順子は、
馬術競技の失敗により
結果的に
馬を死なせてしまったことを、
自分のせいだと感じ
自身を責め続けていた。

乗馬から離れ
東京で暮らしはじめた順子は、
かつての乗馬仲間の篤と
偶然再会する。

心に傷を負った順子が
再生していく様子は
然ることながら、
元カレの妹との同居や
年下の篤との交流が、
なんとも
心地よかった。



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袋小路の男 絲山秋子

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3編の短編集。

『袋小路の男』
高校の先輩で袋小路の家に
住んでいる小田切孝に、
高校生の頃から
ずっと想いを寄せている「わたし」。
「わたし」の視点から、
小田切との12年間を
描いている。

大学生になり
社会人になっても、
指さえ触れることもない。
ただ一度だけ触れたのは、
おつりの10円を受け取った
時だけという
距離感にもかかわらず、
ふたりの関係は
続いている。

付き合っているわけでもない。

「わたし」の視点から
伝わってくる
小田切の印象は、
気難しくて自分勝手な男。
どうして「わたし」が
そんなに小田切に固執するのか、
理解できない。


『小田切孝の言い分』
小田切孝が語る
ふたりの関係。

「わたし」の名前が
大谷日向子だということが
判明し、
彼女の視点でも
交差して語られている。

日向子の語る小田切とは、
また違った印象の
小田切が現れる。

そして
小田切の視点から
語られる日向子は、
日向子が思うほどは
可哀想な女ではない。

普段素っ気なくても、
日向子が困ったときには
助けてくれる小田切は
案外頼もしく、
ラストの絶妙な距離感も
とても良かった。


『アーリオ オーリオ』
小学生の姪っ子・みゆと
天体好きの叔父の哲が、
とあるきっかけから
文通を始める物語。

メールとは違い、
相手の手元に届くまでに
3日は掛かる
手紙のやり取りを
中学生になったみゆが、
「3光日の距離にある新しい星、アーリオオーリオ」
と、例えるような
豊かな世界観を持って
成長していった様子に、
行間にはない
叔父からの強い影響を思い、
深く感じ入った。

みゆの父親の
視野の狭さには
正直ゲンナリしたけれど、
明るい方向へ向かうような
ラストに、
救われた気持ちがした。


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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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