戦国時代末期。
戦と凶作による貧しさに
耐えかねた一家は
夜逃げを決行するが、
追手に見つかり
5歳の少女ウメは
両親と離れ離れになってしまう。
生まれつき夜目の利くウメは
ひとり山中を生き抜き、
石見国、仙ノ山と呼ばれる
銀山の間歩で、
天才山師・喜兵衛に拾われる。
喜兵衛から
銀山の知識と秘められた鉱脈の
ありかを授けられたウメは、
男に頼って生きて行きたくないと
女だてらに間歩で働き出すが、
初潮を迎えたことにより
穢れとして
間歩に入ることを禁じられてしまう。
そして喜兵衛も
徳川による銀山への支配強化により
意気阻喪し、ウメのもとを去っていく。
何よりも大切な存在であった
喜兵衛を失い、
女である自分では
いくら能力があっても、
銀山で働くことには
限界があると
身を持って感じたウメは、
銀山の男に嫁ぐが
愛する人との別れは
残酷にも繰り返し訪れるのだった。
「銀山のおなごは、三たび夫を持つ」
当時言われていた言葉から、
間歩(坑道)で働く男性が
いかに短命だったかがよく分かる。
それでも
家族を養い
生きていくために
銀堀をする夫を、
苦しい気持ちを押し殺して
銀山へ送り出す妻たちの
言葉にならない悲痛な叫びが、
聞こえてくるようだった。
恐らく誰よりも
ウメを愛してくれていた喜兵衛。
喜兵衛に仕える寡黙なヨキ。
ウメとは手子のころからの
ライバルである隼人。
ウメを崇拝する龍。
ウメを取り巻く男性たちが
非常に魅力的だっただけに、
「死なないで、銀山を降りて。」
と、幾度も願ってしまった。
著者による初めての歴史小説。
読んでよかったと
心の底から思った。
本当に素晴らしい作品だった。
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