ぽかぽかな日々

ミステリーと恋愛小説が大好きな、雑読系主婦の読書日記です。

千早茜

しろがねの葉 千早茜

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戦国時代末期。
戦と凶作による貧しさに
耐えかねた一家は
夜逃げを決行するが、
追手に見つかり
5歳の少女ウメは
両親と離れ離れになってしまう。

生まれつき夜目の利くウメは
ひとり山中を生き抜き、
石見国、仙ノ山と呼ばれる
銀山の間歩で、
天才山師・喜兵衛に拾われる。

喜兵衛から
銀山の知識と秘められた鉱脈の
ありかを授けられたウメは、
男に頼って生きて行きたくないと
女だてらに間歩で働き出すが、
初潮を迎えたことにより
穢れとして
間歩に入ることを禁じられてしまう。

そして喜兵衛も
徳川による銀山への支配強化により
意気阻喪し、ウメのもとを去っていく。

何よりも大切な存在であった
喜兵衛を失い、
女である自分では
いくら能力があっても、
銀山で働くことには
限界があると
身を持って感じたウメは、
銀山の男に嫁ぐが
愛する人との別れは
残酷にも繰り返し訪れるのだった。

「銀山のおなごは、三たび夫を持つ」
当時言われていた言葉から、
間歩(坑道)で働く男性が
いかに短命だったかがよく分かる。
それでも
家族を養い
生きていくために
銀堀をする夫を、
苦しい気持ちを押し殺して
銀山へ送り出す妻たちの
言葉にならない悲痛な叫びが、
聞こえてくるようだった。

恐らく誰よりも
ウメを愛してくれていた喜兵衛。
喜兵衛に仕える寡黙なヨキ。
ウメとは手子のころからの
ライバルである隼人。
ウメを崇拝する龍。
ウメを取り巻く男性たちが
非常に魅力的だっただけに、
「死なないで、銀山を降りて。」
と、幾度も願ってしまった。

著者による初めての歴史小説。
読んでよかったと
心の底から思った。
本当に素晴らしい作品だった。



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森の家 千早茜

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「互いのことは深く干渉しない。」
という暗黙のルールのもと
30歳過ぎの美里と
ひと回り年上の恋人の佐藤さん、
その息子で大学生のまりも君は
緑に囲まれた佐藤さんの家で、
まるで「寄せ集めの家族」の様な
気ままで居心地のよい生活をしていたが、
ある日突然
佐藤さんの失踪により失われます。
それは14年前に交わされた
「ある約束」のためでした。。。






この作品は
美里視点の「水の音」
まりも君視点の「パレード」
佐藤さん視点の「あお」
以上の3つの短編により描かれています。




美里は母親へのトラウマに囚われていて
そのことはとても気の毒だけれども、
物事の表面しか見ていなかったり
感情に任せて行動してしまうような
ちょっと面倒臭い性格。
けれど佐藤さんの失踪後は、
不器用ながらも自分自身ときちんと向き合い
まりも君とも向き合い、
前向きに佐藤さんを探し回る
実はとても逞しい女性。
この作品の中では
私は美里の「水の音」が一番好きでした。


まりも君は
自身の過去の経緯から、
(実は佐藤さんとは訳あり親子なのです)
感情を押し殺し
全ての物事を諦めて生きてきたため
佐藤さんの失踪後も探そうとはしませんでしたが、
美里から
「忘れられない景色を共有していたら、それは家族だよ。」
と教えられてからは、
佐藤さんと前向きに向き合おうと
美里と一緒に探そうと思えるようになります。
ちょっと屈折しているけれど、
真っすぐな青年といった印象で
「パレード」もサラッと読めました。





問題は佐藤さんですよ。
「あお」というタイトルですが、
底なしの湖に飲み込まれてしまうような
どんよりとしたお話でした。
佐藤さんも勿論気の毒なのですが、
なんとも恨みがましいし
人間が薄っぺらいし、
他人に対する態度も最悪。
佐藤さんに対しては
ひとかけらの魅力も感じませんでした。
そもそも
いい人ぶっているけれど
他人のせいにし過ぎな人に思えました。





行き場のない
未熟な3人が再び寄り集まって、
さみしさを共有しながら再び生活をするのでしょうか。
それとも
これからは美里が頑張って、
前向きな「家族」として生活をするのでしょうか。


ほんの少し
さみしい気持ちになった作品でした。





















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男ともだち 千早茜

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関係の冷めた恋人と同棲していながら
遊び人の医者と不倫をしている、
イラストレーターの神名葵29歳。
仕事は順調なはずなのに
本当に描きたいことを見失っている。
ある朝
大学時代の男ともだち「ハセオ」から
10年ぶりに連絡が来て・・・





学生時代
「互いが景色の一部になってしまうくらい一緒にいたけれど、
恋人同士ではなかった」ハセオと神名。
誰よりも理解し合いながらも、
決して愛し合うことはありません。

幼少期の経験により
男性へのトラウマを抱えた神名にとって、
ハセオは
同じ布団で寝ても安心して眠ることの出来る
唯一の男性。


長い間、離れていたハセオと再び連絡を取り合うようになり、
神名の周辺に少しずつ変化が起こります。
学生時代からハセオが絡むと男性関係が上手くいかなかったという神名。

「もしやハセオはやっぱり神名のことが好きで
ぶち壊しているのかな?」
などとニンマリしながら読み進めていくと、
どうやらそんな単純なことではない様で...
ハセオの神名に対する
色恋を超えた、
深く不器用な愛情を感じるのです。




神名は友人には、
「ハセオのことを失いたくなかったら、
絶対にセックスしちゃだめよ。
しない限り、神名は特別でいられるんだから。」
と言われ、
元女王様(!)の露月さんには、
「あの坊やはあんたの幻想。
そんなもの、さっさとやっちゃって壊してしまいなさい。
特別なんかじゃないわ。」
「お子さまが傷舐め合いながらおままごとしてたって仕方ないわよ。」と、
一歩踏み出すことを進められ
ハセオとの関係性に悩みます。
けれど何事も糧にする神名は、
現状を変え仕事に正面から向き合って行くのです。


読み始めの頃は
恋人がいるのに愛人と不倫をしていて、
ハセオとも連絡を取っているなんて
なんだか狡い女だな。
という印象を持っていたのですが、
読み進めるにつれ
打ちのめされても這い上がってくる神名のことを
「幸せになって欲しい」と、
願うようになってきました。


神名の求めていた景色。
それは
******
まっすぐに進む強い自分の姿。
たとえ、どんな姿になったとしても、
焼け野が原にたったひとりになってしまっても、
光る星影や昇る太陽に美しさを見つけて立っていられる自分。
******


なんてカッコよい女性なんだろう。
そして強いのだろう。

きっと
神名がこんなに強くなれたのは、
再びハセオと会えたから。

そして
ハセオは会っていなかった期間も
恐らく神名のことを見守っていたのだと思います。


だってハセオにとっての最大の愛情は
「見ててやること」だから。




神名の彼がハセオのことを
「男ともだちって狡い響きだね。」と、言っていました。
私もそう思いました。

けれど読み終わった時の感想は違いました。
ハセオと神名は魂の欠片を共有している。
それは永遠のこと。
そして大切な存在。
大切な男ともだち。。。


















さんかく 千早茜

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高村さんと伊東くんは
かつてのバイト仲間でしたが、
6歳年下の伊東くんは高村さんとは
会話もしたことがありませんでした。

ただ伊東くんは
高村さんの作る「まかない」がとても美味しく
忘れられずにいたのです。


東京での生活に疲れた高村さんは、
仕事を独立して
かつて住んでいたことのある京都で
古い京町屋を借りて住んでいます。
もう恋はいらないという高村さんは
ひとりで気ままな生活を楽しんでいました。



伊東くんと高村さんは偶然再会し
食の趣味の合うことから意気投合します。
あるきっかけで
伊東くんは飲み仲間から
高村さんの家に同居することになるのです。




この時点で
伊東くんは恋人の華がいるのに、
高村さんにそのことを内緒にし
仕事に夢中の華にも
同居のことを内緒にしているのです。


「ずるくない?」



嘘が長続きするはずもなく
ポロリポロリとバレていきます。
それをまた嘘でごまかす伊東くん。




いくら仕事人間でも
伊東くんの異変を感じる華。


そして
「もう恋はいらない」と思っていた高村さんも
他人の為に料理を作る喜びを感じ始めていたのです。
自制心の強い高村さんは、
伊東くんに彼女がいることを知り
静かに傷つくのです。



取り繕うほどに
周りをどんどん傷つけていることに
気が付きもしない伊東くん。



私はもう
伊東くんの自分勝手さに腹が立って腹が立って。

この作品は
高村さん→伊東くん→華
の順番での短編になっており
それぞれの視点から物語を読むことが出来るのですが
高村さんの知らず知らずのうちに伊東くんに尽くしてしまっているところや、
仕事に夢中で伊東くんの存在をちょっと面倒に思いつつも
女の子らしさを忘れない様に頑張る華には共感できるのですが、
伊東くんには全く共感なんか出来ませ~ん!

むしろ
「毎回出てくる美味しそうな料理を台無しにしやがって!」
くらいの怒りすら覚えるほど

しかも
高村さんにあれだけご馳走になっておきながら
「そういえばろくに食費も払ってなかった」って
バカなの???

最後の心の中のセリフ
「ぼくはあなたの役にたっていましたか?」って
大バカなの???


ほんと嫌だ。
こういう奴。

無意識のうちに全部周りに決めさせて、
自分は決して悪人にならない。
最低な男ですよ。


高村さんの最後のセリフ
「選べる自由って1番を見失うよね」
これはどんな意味だったんだろう。

高村さんの気持ちがとても切なくて
ますます伊東が許せない。



華は本当にそれでいいのかな?
もっと華の良さを分かってくれる人いるんじゃない?



あぁ男の二股って本当に嫌ね。
いや二股にはなってはいないかもだけど、
三角関係で自分が選ぶ立場だと思っていたって
どんだけだよ。


伊東にムカムカが止まらないけれど
出てくるお料理はとっても美味しそう。
高村さんの古い京町屋がちょっぴり羨ましくなりました。



高村さんの未来が
幸せでありますように。。。












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プロフィール
kokemomoです。 思春期の子供2人、子育て中。 小説、エッセイ、実用書、コミック、どれも大好きですが、暴力的なシーンの多い話はちょっと苦手です。。。
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